帳簿は黒字なのに、手元のお金は年々減っていく。一棟アパートの経営で最も相談が多いのが、この「デッドクロス」の局面です。持ち続けるか、売るか。判断の物差しを3つに絞って解説します。
デッドクロスとは何が起きている状態か
賃貸経営の税金は「帳簿上の利益」に対してかかります。帳簿上の利益を圧縮してくれるのが減価償却費——実際にはお金が出ていかないのに経費にできる、いわば紙の上の経費です。
ところが減価償却には期限があります。建物や設備の償却が進んで経費計上できる額が減っていく一方で、ローンの元金返済(こちらは実際にお金が出ていくのに経費にならない)は毎月続く。ある時点で両者が逆転し、帳簿は黒字で税金は増えるのに、手残りは減っていくという状態になります。これがデッドクロスです。
築15〜25年の木造・軽量鉄骨アパートや、中古で取得して耐用年数の短い償却を組んだ物件で、よく起こります。
デッドクロス自体は「悪」ではない
最初に申し上げたいのは、デッドクロスは失敗ではないということです。減価償却を先に使って税負担を繰り延べてきた結果であり、いわば計画通りの現象です。問題は、それが来ていることに気づかず、手残りの減少を「なんとなく苦しい」で放置することです。
売り時の判断基準は3つ
1. 「今後5年持った場合の手残り累計」と「今売った手取り」の比較 今後5年の税引後キャッシュフロー(賃料 − 経費 − 返済 − 税金)を見積もり、その累計と、今売却した場合の手取り額を並べます。5年我慢して得られる金額より、今売って得られる金額のほうが大きいなら、持ち続ける理由は「相場の上昇待ち」しかありません。この比較表を作るだけで、感覚の議論が数字の議論に変わります。
2. 大規模修繕の前か、後か 外壁・屋根・給排水などの大規模修繕は、一棟アパートで数百万円から一千万円超。修繕の直前に売るのか、修繕してから売るのかで手残りは大きく変わります。修繕費をかけても、その全額が売却価格に乗るとは限りません。見積もりを取ったうえで「修繕せずにその分を織り込んだ価格で売る」方が有利なケースは多くあります。
3. 買主が融資を引ける環境かどうか 収益物件の価格は、買主がどれだけ融資を引けるかに大きく左右されます。金利が上がり融資が締まると、同じ物件でも買える人が減り、価格は下がります。自分の売りたいタイミングと、買主が買えるタイミングは別物です。売り時の半分は市場が決める——これは実務の実感です。
判断を先送りにすると起きること
デッドクロスの物件は、時間の経過とともに「手残りの減少」「建物の劣化」「入居者の高齢化・賃料の逓減」が同時に進みます。つまり、迷っている間も選択肢は静かに減っていきます。売る・売らないを今決める必要はありませんが、数字を把握するのは早いほど有利です。
数字はこちらで用意します
Figoでは、レントロールと固定資産税の課税明細を拝見できれば、「今売った場合の手取り」と「持ち続けた場合の見通し」の比較を無料でお出ししています。詳しくは一棟収益不動産の売却をご覧ください。
